【会社四季報】 配当
配当の欄では、その会社がこれまでどのように配当を出してきたか、そして今年はどのくらいの配当を出す予定であるかを知ることができます。
配当金の出し方は企業によって特徴があり、出し方も様々です。
基本的に配当金は企業の収益をもとに出されるため、赤字の企業や業績が急激に悪化した企業については配当金がゼロの場合がほとんどです。(まれに株主が株を手放すことによる株価の下落を恐れて、赤字企業や業績が極端に悪化した企業が配当金をだすことがあります)
一般的に、配当は株価の0.5%~2%くらいが平均的な数字だと考えられています。
個人投資家からみると、配当金は多ければ多いほど良いような感じがしますが、こと配当に関しては少し事情が複雑なので、以下で説明していきたいと思います。
まず、一番最初に申し上げておきますが、理論的に言えば現在、成長途上の企業であれば配当は0円であるのが最も理想です。
というのは、企業の成長も投資した資本に対しての複利で増えるからです。
配当というのは、企業の稼いだ利益を株主に配分したものです。現在”育ち盛り”の企業であれば、利益の一部を株主に配分するよりかは、全てを再投資したほうが将来の利益が多いのは理解できるかと思います。
企業Aと企業Bの2つの企業があり、そのうち、企業Aは毎年、利益の全額を株主に配当金を出し残りを新規事業に再投資しています。一方、企業Bは利益の全額を再投資して事業を行っています。どちらも投資金額の10%を利益として出せるとします。
これらの企業の成長について分かりやすく図にすると、以下のようになります。
企業A(再投資型) |
企業B(配当型) |
|||||
投資金額(資本) |
利益 |
配当 |
投資金額(資本) |
利益 |
配当 |
|
1年目 |
1000 |
100 |
0 |
1000 |
100 |
100 |
2年目 |
1100 |
110 |
0 |
1000 |
100 |
100 |
3年目 |
1210 |
121 |
0 |
1000 |
100 |
100 |
4年目 |
1331 |
133 |
0 |
1000 |
100 |
100 |
5年目 |
1464 |
146 |
0 |
1000 |
100 |
100 |
※単純化するために小数点以下は省略しました。
この2つの企業を考えてみれば、配当が少ないほうが将来の成長率が大きいのが簡単に理解できると思います。
受け取る価値で考えれば、配当をまったく出さない企業Aは
投資金額(資本) 1464 + 利益 146 = 1610
が、株主が全員で受け取る金額です。
一方で、全額を配当として株主に出す企業Bの場合では
投資金額(資本) 1000 + 配当5年分 500 = 1500
が、株主が全員で受け取る金額です。
要するに、成長率がおなじであれば企業の利益も投入した資本量に応じて複利で増えるということです。一般的に個人投資家が考えているような、配当金額が多い会社が良い経営を行っている会社では無いことさえ理解して頂ければ十分です。
日本国内では配当性向が高い会社が人気ですが、海外だと無意味な配当は嫌われる傾向にあります。このあたりにも、日本人がいかに株式投資について知識不足であるかが如実にあらわれていますね。
実際問題としては、配当には税金の問題も大きく関わってきます。配当金には20%の税金が掛かりますので、1000円配当金が出たとしても、実質的に手元に残るのは800円だけです。
毎年、配当が出ていても毎年20%は税金として国に取られてしまうのです。株の保有期間が長ければ長いほど、税金も多くかかってしまうので、全額再投資された場合と比べて、手に入る金額も相対的に少なくなってしまいます。いわゆる、逆の複利効果が発生してしまうのですね。このあたりも配当について知っておきたいところです。
基本的に、配当金をたくさん出すのが良いとされる企業は「もうこれ以上成長できない企業で、かつ、しっかりと利益の出ている企業」だけです。
例えば、シェアが圧倒的で、その分野では誰もその状況を覆すことが出来ないような高収益企業は利益のほとんど全てを株主に配当として出すのが最善の策でしょう。
このような企業の例としては、Windowsを製造・販売しているマイクロソフトや私たちに電力やガスなどを供給している電気、ガス会社などが当てはまります。
これからマイクロソフトを超えるようなOSの会社を作ろうと思ったり、電力会社やガス会社を立ち上げようなんて人は普通いませんからね。これらの企業はある意味で既得権益に守られていると考えることも出来るでしょう。
こういった理由で、電力やガスの会社は配当が高めな設定になっているのですね。
理解して頂けたでしょうか?
配当については、その金額だけではなく、その企業が出している配当がどのような種類の配当であるかを、営業利益や純利益などの推移から理解できるようにしましょう。
また、配当政策からはその企業の長期的な戦略を読み取ることも出来るので、なぜ配当がその金額になっているのだろう?」という疑問を持って、配当欄については見るのが良いと思います。
たかが配当、されど配当。
配当の金額を企業の利益と関連させて考えられるようになったら、もう一人前の投資家です。