第10回 アナリストのレポートは信頼できるのか
各証券会社には個別の銘柄についての分析を行い、投資すべきか否かをレポートにまとめて発表している人たちがいます。
このような人たちのことをアナリストと言い、アナリストが発表するレポートは私たちが投資をするときの貴重な情報となっています。
このサイトを見ている方の中にも、アナリストがレポートで「買い推奨」が出ているから安心して株を買っているという方も多いのではないでしょうか?
各証券会社には専属のアナリストがおり、それ以外にもアナリストを生業として独立している人も多数います。アナリストになる資格もあるくらいですから、専門家中の専門家といえるかもしれません。
でも、待ってください。アナリストのレポートどおりに株式投資をして、儲かったことはどれくらいありますか?いつもアナリストのレポートが正しいのであれば、レポートを読んで投資をした人全員がお金持ちです。
しかし、往々にしてアナリストのレポートは外れます。
これには深い理由があるのです。
まず、アナリストのレポートを読むときにはアナリストの気持ちになって内容を読み込むことが大切です。自分本位で内容を読み込んでしまうと思わぬ失敗をしかねません。
アナリストはアナリストなりの事情があります。まずひとつは、彼らは非常に短期間でレポートを書き上げなくてはならないという時間的な制約です。
アナリストは決算発表直後にレポートを書き上げる必要があります。そして、通常は1晩であの内容を書き上げるのだそうです。
なぜそんなに急ぐ必要があるかと言うと、これは私達のような投資家に原因があります。
投資家は先に届いた証券会社のレポートしか読まないという特徴があります。
投資家は決算直後に決算の内容を早く・性格に・そして楽に知ろうとします。しかし、そのくせ利益だけは出したいと都合良く考えているので、早く出たレポートに群がる傾向があります。
決算発表直後であれば、早く動けば株価が情報に反応する前に株を手に入れることができるため、決算直後の投資家はあせっているのです。
それに合わせてアナリストは急いでレポートを作成します。わずか数時間で数十ページに及ぶ決算短信やIR資料を読みこなし、そしてレポートを書き上げる必要があるのですから、厳密な財務分析などやっている暇があるわけありません。
こういった理由もあってか、アナリストのレポートは正確性にやや劣る側面もあります。流石にプロのやることなので、まったく見当外れということはあまり無いでしょうが、そのあたりは注意しておいたほうが良いようです。
また、よくよく考えてみると証券会社に勤めているアナリストにとって、評価している企業はお客さんだということも分かります。
アナリストが勤務している証券会社は個人や機関投資家の窓口としての部門だけでなく、M&Aなどの巨額の資金が動く事業も合わせて行っています。
一時的なことであっても、アナリストレポートで酷評すれば、将来的に重要な顧客を失うことにもなりかねません。証券会社としては、せっかく大型のM&Aの案件がまわってきても、「この前おたくのアナリストに酷評されたからなぁ」という理由でチャンスがフイになってしまってはたまらないという訳です。
法律上はこの2つの事業は厳しく分類されていますが、やはりこのあたりは人間同士が行うことなので仕方が無い事なのかもしれません。
以上のような理由により、アナリストは厳しいコメントをするのを避ける傾向があります。レポートに圧倒的に「買い推奨」のほうが多く、「売り推奨」が少ないのはこのような理由によります。
一見、中立的な内容に見えるアナリストのレポートにも様々な利害関係があることは知っておくと良いでしょう。
このような理由を常に頭に置き、アナリストのレポートを読むときには、あなた自身の身を守ることにつながります。
文章には出ていないけれど、行間ににじみ出ている細かなニュアンスを汲み取るようにし、評価が下がった銘柄には極力手を出さないようにするのが堅実です。